
20-06-2007
「止まる」-瀬田
猫さんが普段人前に晒さないような顔をして、道路に倒れた僕を見ていた。
初めて聞く、情けのない涙を吐き出す声で僕を叱りながら謝っていた。
遠ざかる地面を叩く蹄の音、言葉にならない低い声。その声も涙を吐いていた。
お腹に刺さった猫さんの包丁から赤い言葉が漏れてくる。誰も間違っていないんだよ、と僕の血は言っていた。
山羊さんのしようとしていたことも猫さんがしたことも、僕がしたことも。
色んなこと、場が遠ざかっていってしまう中、「止まる」ということばだけが自分に近づいてきている。
生活には自分が続けたいと思っても終わってしまうこともあるし、止めようと思わない限り続きを進められることもある。
僕は自分を停止させることでこの街での僕達の生活を一時停止させた。
変わることの少ないこの街で変化を求めた僕達の生活を僕は忘れはしない。
一時停止したお話がこれからどう変化するのか知ることは出来ない。良い方向に進んだら良いな。
眠れないで動き続けた生活を、僕は忘れはしない。
猫さんの落とした煙草が隣で燃え尽きた。
大切なものをからだに詰め込んだままに、僕はゆっくりと止まった。