17-06-2006
おかしな街とよそもの狼-余所者狼・十月(過去)

目が覚める前の出来事=
軍用犬施設での暴動――自分の過ちで死んでいった多くの仲間たち/自分が殺した多くの人間共/傷一つ無い自分の体。
白い毛並みが仲間の血/人間の血で混じり合い赤茶色く染まっていた。
静かになった施設、外から多くの足音・荒い息遣い・怒声―人間たちの咆哮=増援部隊。
生きる事を辞めたがっている心<更なる戦闘を望み、戦いの愉しみを求める体。

扱い慣れすぎた銃・銃弾=人間達の牙。死んだ仲間達の認識票。
それらを拾い集め、増援部隊の連中を迎え撃つ為の多くの武器を手に入れようと兵器庫へ向かった。
多くの足音が段々とこちらへ近付き、それにしたがって人間の体臭・汗=緊張・恐怖の匂いが鼻を衝いた。
人間共の咆哮。銃声で聞こえなくなった。咆哮は悲鳴に変わった。更に銃声―静寂。血の匂い・小便・糞の匂いが混じった。
聞こえるのは興奮した自分の荒い息遣いだけだったがそれは長く続かず、また賑やかになり始めた。

今まで立ち入りを厳しく禁じられ、厳重に閉ざされていたドアが口を開いているのを見た。
そのドアの向こうには狭い部屋があり、良く分からない多くの機械とさらにドアがあった。覗く―一人入るのがやっとな小さな/妙な個室。

――ピンを抜く音、部屋に投げ込まれる複数の手榴弾―気付かなかった。
奇妙なタクティカル・スーツを身に纏った人間の姿。匂いも気配も何も無い。
とっさに小さな/妙な個室に入り、爆風を防げるとは思えないドアを閉め身を伏せた。爆発/誘爆し機械が派手に音を立て、耳を劈いた。


――死んだと思っていたが自分は生きていたようだ。しかし何かがおかしい。
辺りを見回す―見知らぬ街、夜なのだろうか。
空を見上げる―辺りは朽ちた/朽ちかけた建物ばかり、所々窓から明かりが漏れている。
月を見たいと思ったが何処にも見当たらない。奇妙なタワーが白く薄暗く発光し、この街を照らしているらしい。
そのタワーは有り得ない程高く、天の方へと伸びている。

この街は何なのだろうか。
自分の知っている場所ではないと言う事とこの街は酷く奇妙だという事、そして自分はこの街では余所者だという事しか分からない。

遠くから多くの犬たちが吠えているらしい声が聞こえてきた。