

30-09-2006
錆(寂)-山羊と犬
お前なんか要らない、捨ててやろうか。
知ってるだろう、お前はクガツの代わりに過ぎない。
お前を捨てて、また代わりの誰かを見つけよう。
情けなく震えている自分の声。
犬の首輪の鎖を引き寄せ耳元で囁けば犬は怯えた目で自分を見つめ、
同じ様に震えた声で捨てないで、を繰り返しながら自分を悦ばそうと必死になる。
自分も犬も、飽きずにそれを繰り返す。錆付いてゆく。
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狼とその群れを捨て、山羊である自分を選んだ今目の前に居るこの犬。
大勢の中の一匹が嫌で仕方がない、二匹だけの関係と場所を欲しがっていた犬。
上の街に居た頃好きだった人間に捨てられ、その仕返しにと好きだった名前を捨てて以来空白だった犬に山羊は九月と名前を付けた。
自分が壊してしまった大事だった存在と同じ名前。違うけれど似た姿かたち。性格は正反対で白と黒だったがそれは灰色になった。
似ているところが沢山だった。一緒に居て落ち着くというところも、酷く不安にさせられるところも。
今は犬はいつも自分の側に居てくれ他の誰とも関わらず喋らず、言う事を聞いてくれるがいつかはいなくなるのだろう。
狼や仲間たちを捨て自分のところへやってきた犬は、いつかは同じ様に自分を捨て他の誰かのところへ行ってしまうに違いない。酷く不安になり落ち着かない。
元居た群れ、狼のところに?自分の考えを否定しおかしいと罵った、我楽多飯店の連中のところに?
九月が飯店の連中と関わりがあるのかどうかはわからないが、きっとあるのだろうと思いこんでしまう。
犬が自分以外へ行かないよう、奴らを皆殺したいが連中が怖くて仕方がない。
飯店の連中。自分を否定されて以来怖くて近づけない、情けなく震えるだけしか出来ない。
群れを率いる白い狼。山羊の自分には立ち向かえない。身動き出来ないほどに弱らせて、そして犯してやりたいとは思いつつも怯えるだけ。
ならこの、いつも自分を酷く不安にさせるこの犬を捨ててしまおうか、捨てられる前に自分が先に捨ててやろうかといつも思う。壊したいとは思えない。
嬉しそうになきながら近付いてくる九月を蹴り倒し、酷い言葉を浴びせてしまう。壊してしまったクガツにしていたことと同じ事を飽きもせずに繰り返す。
捨ててやろうか、というたびに犬は酷く怯え捨てないで、と言い自分を悦ばそうと必死になる。喜んで咥え込む。犯される。