今日も朝を街続け-フェリス(十一月)



自分の始まりがいつだったか、どんなものだったか覚えていない。終わりはまだ分からない。
まあ、なんだろうな。無駄に長く、これからもこれからを続けていそうな気がする。
周りが変わってしまっても、それまでの当たり前がなくなっても、それを受け入れてネコは生きる。
無情に無常だとネコは知っている、だから目の前を流れる刹那を楽しむ。

生活を続ける中で終わりを体験することは一度しかない。自分が消える、その流れをついに外れるその一瞬だけだ。
しつこく生活を繰り返しているつもりでいると、終わりのように見えるものを嫌と言うほど目にしちまうだろう。
けれどそれはただ終わりのように見えてるだけで、実際はただの変化でしかないんだにゃあとネコ連中は当たり前に心得ている。
だがイヌ連中はその変化を終わりと錯覚し、いちいち悩んでキャンキャン泣き吠えて、誰かに縋る。
ネコはそれを見て、悩み上手なイヌの毛が悩みすぎて抜け、みっともない姿になる様を想像して大変だにゃあと静かに笑い合う。
出会った瞬間から別れへと手を引かれ始め、それを受け入れられないのがイヌ。ネコはそれを静かに繰り返す。

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跳んだりよじ登れば見慣れたいつもの屋上。おもちゃ箱に縦に突き刺さった馬鹿でかい蛍光灯。
そいつが放つ真っ白な光が大きな箱の空間と、その中に散らばる小さな箱の輪郭と同化しながら背中に影をつくる。
幾度もしつこく見渡した、この街の眺め。自分や周りの連中がどう生きてどうやって死のうが街は全く変わりやしない。
変化するのは、ひとりひとりの集まって出来た些細なつくりもの。慌しく賑やかな期間が過ぎ去り大人しいものへと形を変えた。
「ここでもう終わりなのかなあ」と、あの痩せた犬っころは相変わらず薄暗い路地裏から天井を見上げているのだろうか。
犬っころのつくった連中は自分勝手に生きて身勝手に悩み、それぞれの終わりへと向かって逝く。
悩みと楽しみの繰り返しが辛いだとか、捨てる捨てられるの考えに悩んだりだとかで、ほんと忙しい奴が多い。
自分の目から見る街は少しばかり静かになっちまったけれど、相変わらずだ。俺は街のように、刻み込みながら、これからを見渡し続ける。

いつもの癖で自分の横に顔を向けてしまう。
飯店での賑やかだった生活、その中の黒色のわん公。
お互いに寝付くのが下手糞で、この屋上のこの場所で隣り合って、光がきつくなるのをただ待ち続けていた。
もう隣にお前が居ないから言っちまうけれど、俺はお前が好きで仕方がなかった。

空に見せかけた天井、大きな部屋。静かに眩しく、見えないこれからに目を向けた。


02-04-2008