「始月、四月、死月。」


30-01-2007
「始月、四月、死月。」-始月(a)
理不尽な生を子に与える親、理不尽な死を親に与える子。
自分に理不尽な生を与えた親である人間に理不尽な死を与えても構わない、と言った考えは
覚えている自分が始まった月と、死んでしまった最後の月の自分が共有していた大きなものだった。
昔の自分と今の自分は自分とよく似た他人の様なもので、二人が同じ自分だとは思えない。
その二人ともが半分ずつ同じ場所に蹲り、そこから立つ去ろうとすることなく長い時間を過ごしてきた。
多くの連中が自分たち二人を否定したということは、自分は間違っていたということなのだろうか。
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自分が自分の事を自分だ、と理解した月の事は覚えていない。
覚えている自分が始まった月は欠陥が原因で処分されそうになった四月の日、
拾われた先での汚い部屋の中、自分の糞尿や自他の精液の匂いで汚れた四月の日。
客である汚い人間の男たちはこの汚れた場所で、汚れた獣をオスであろうがメスであろうが構わず乱暴に扱う。
人間が玩具で遊ぶことに飽きるまで、獣たちは怯えたり抵抗したりしながら終わるのを待ち続ける。
右の前脚と後脚、左の前脚と後脚を縛られ犯され続けたメス犬。白く綺麗だった毛並みは白く汚れた。使われすぎた挙句、犬は壊れた。
肛門を好き勝手に犯され、自分の糞のこびり付いた棒を舐めさせられることになれた山羊。壊れてしまえばいいと思ったけれど壊れずにいた。
抵抗して人間を傷つけると酷い目に遭わされることは分かっていたし、大体の客は嫌がる自分を動けないようにして犯すのが好きだった。
嫌がり恐がり、怯えつつも実は悦んでいたのか勃起し射精に至る自分の身体。
自分ひとりになったこの灰色の部屋で、ここへ連れてこられる前に少しだけ見た青く広い天井をした部屋のことを思った。
青色の部屋の中には沢山の箱があって、その中にも人間や自分とは違う獣たちが沢山いるらしい。
沢山の人間は正直とても怖いけれど、また青色の部屋を見たいと思った。
喉を流れるものは涙と鼻水に涎、精液に時々尿。自分を飼っている人間に隙間越しに与えられる、飲むと眠くなる水。
飲む度気づかず眠ってしまい、目覚めたときには汚れた身体はある程度きれいにされていて、そして味の分からない餌が入った皿が置かれている。
飲むと眠ってしまうという事は分かっているけれど、喉や内側を少しでも洗いたくて飲んでしまう。
この水を飲むのを我慢して排水溝へ捨ててしまい、眠ってるふりをしよう。寝てると信じた飼い主がドアを開け、首輪の鎖を外したとき逃げ出そう。
そうすればまた、自分の良く知らないあの青い部屋が見られるかもしれないと思い行動を起こした。
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そこから自分ははじまり多くの苦痛と快楽を繰り返し、痛みを伴う出会いと別れを少しだけ繰り返して今の自分になった。
四月のあの日に動き始めた始月は、四月を通じて死月と出会った。